日本酒物語

日本酒は、とても繊細で奥の深い嗜好品。素材や仕込の違いはもちろん、銘柄によっても味わいは千差万別です。日本酒はどのようにして育まれているのか?自分好みの日本酒を見つける手がかりは?知るほどに味わい深い日本酒の世界を5つの物語で綴ります。
酒母造り
酒造工程ナンバー1

日本酒はこうして造られる

日本酒は米・米麹・水を主な原料とし、これらを発酵させて造る醸造酒の一種です。日本酒の造り方は、同じ醸造酒であるワインやビールにくらべ手間のかかる作業で、麹による「糖化」と、酵母による「発酵」を同時進行させていきます。「並行複発酵」と呼ばれるこの方法は、世界でもめずらしく、東アジア(日本、中国、韓国など)で見られる独特の文化です。
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日本酒ができるまで

  • 精米・洗米・蒸米
  • 麹造り
    米の糖化を促す麹を造る
  • 酒母造り
    発酵を促すための良質な酵母を培養
  • もろみ造り
    ここからが本格的な酒造り。
    酒母に蒸米・麹・水を加えて発酵させる
  • 上槽
    もろみを搾って日本酒と酒粕に分ける
  • ろ過・火入れ
  • 貯蔵・調合・割水
  • 火入れ・瓶詰め
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酒造工程ナンバー2

酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)とは?

日本酒造りには様々なお米が使われます。その中でも日本酒造りを目的に造られたお米のことを「酒造好適米」と呼びます。日本では100品種以上の酒造好適米が栽培されており、どんなお米を使うかによって味わいが違います。ここでは4大酒造好適米をご紹介します。
精米

山田錦(やまだにしき)

酒造好適米の中で、最もメジャーなのが山田錦。“酒米の王様”とも呼ばれる品種で、香味が良く大吟醸や鑑評会出品酒の原料として使用されることの多いお米です。

五百万石(ごひゃくまんごく)

山田錦とともに、酒造好適米のツートップともいわれます。酒所・新潟生まれの品種で、柔らかですっきりとしたキレのある日本酒を造るのに最適です。

雄町(おまち)

歴史の古い酒米で、山田錦や五百万石のルーツでもあります。栽培が難しく、かつては“幻の酒米”ともいわれました。芳醇でしっかりとした味わいが、今でも根強い人気を博しています。

美山錦(みやまにしき)

長野県で発見された比較的新しい品種。米の中心(心白)が山の頂の雪のように白く美しいことから「美山」と命名されました。五百万石に似た、すっきりとした味わいが特徴です。
滓ひき
酒造工程ナンバー3

吟醸造りとは?

吟味して醸造することをいい、伝統的に60%以下まで精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、フルーティーな香りや華やかな香りがするよう醸造することを言います。米・米麹のみを使用しているものを「純米吟醸」、香り高く後味をすっきりさせ品質を安定させるために微量の醸造アルコールが含まれるものを「吟醸酒」と呼びます。
酒造工程ナンバー4

日本酒で四季を味わいたい

日本酒は世界的に見てもめずらしい、四季のあるお酒。春・夏・秋・冬、その季節でしか味わえないお酒を知っておくと、楽しみが広がります。
海とお猪口

冬:「しぼりたて」

秋に収穫されたばかりの米で酒造りを行い、できあがってすぐに出荷されるその年の新酒。しぼりたての生酒をそのまま瓶詰めしたフレッシュ感が魅力です。

春:「花見酒」

春を思わせる華やかな香りのお酒です。この時期に楽しめる「うすにごり」や「おりがらみ」はお花見などの宴席から、春の食材で彩られた食卓まで。馥郁(ふくいく)とした香りが、新しいことが始まり心躍る春の季節をより輝かせます。

夏:「生酒」

冬から春先に仕込まれた酒を低温熟成し、夏の時期に出荷。通常の日本酒は2度の火入れ(加熱殺菌)を行いますが、生酒は一度も火入れしないため爽やかでみずみずしい味わいが特徴です。冷蔵庫でよく冷やしていただきましょう。

秋:「ひやおろし」

酒蔵の貯蔵タンクでひと夏を越したお酒。じっくりと時間をかけ熟成され、まろやかでふくよかな香りとコクのある味わいが特徴です。秋刀魚、カツオ、寒ブリなど秋が旬の食材と相性が抜群です。濃厚な味わいの食材とひやおろしの旨みは調和が良く贅沢なひと時を味わえます。
蒸米
酒造工程ナンバー5

生酛(きもと)と山廃(やまはい)を
知れば、日本酒通に

日本酒の造りのひとつに「生酛造り」と「山廃仕込み」があります。生酛は酒母を造る際に、蒸し米、麹、水を半切りという桶に入れ、米を櫂棒で摺りつぶす「山卸し」という作業を行い、天然の乳酸菌を酒母の中で増殖させます。山廃仕込みはこの山卸しをせずに酒母に乳酸菌を入れる「山卸廃止酛」の略になります。複雑な旨味や独特の酸味があり、ボリューム感のあるお酒ができあがります。燗酒デビューにはすっきりとしたキレがありつつも濃醇な生酛をぜひ!
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